中国新聞よりシニアのくらしの日記

ハミングロード

 老いと私 小沢昭一
 先立たれると男はダメ  独り身の暮らし不安
 私の中学以来のお友達で今や文学座重鎮の加藤武さん。 彼とは一緒に合同結婚披露宴をやったりした仲でしたが、先年奥さんを亡くしまして、今や独り身です。 又、これも仲良ししのおなじみ永六輔さん。 彼もまた愛妻に一昨年先立たれました。 親しさ故に「黒柳徹子さんと再婚したらお似合いだなア」などと冗談をいつて、私、嫌がられております。
 お二人とも、さぞおつらかろう心を、明るい笑顔で包み、仕事に精出しておられますが、もう七十歳を越えてからの独り暮らしは、いくら明るくしていても『月は晴れても心は闇だア』のご心境じゃございませんかと、お察し申し上げております。 私より少々先輩の三木のり平さん、西村晃さん、このお二人もお元気に大活躍でしたが、奥様を亡くされてから、しばらくして後を追われました。 男は長年の連れ合いを失うと、モロイのだなアとつくづく思います。 そのことを言うと永さんは「俺を早く死なせようとしている」なんて笑っておられますが、しかし、じっさい、夫婦元来、番いで生きる。 年をとればなおさら゛二人で一人゛の夫婦ですから、片方の翼を失った飛行機は墜落しがちなんです。 いえ、例外も多いのですし、それに亭主を亡くして涙に暮れている奥方が、やがてシャキッとしてくるというお姿もよく拝見するのですが、でも繰り返します。男はダメ。 今朝も我が家の庭に来た小鳥も睦まじく二羽で、隣の屋根が好きなカラスも二羽連れ立ってカァカァです。 ま、これが生き物の原則かもしれませんが、それを眺めるにつけても、もし我が身が、いま、独り身となったらどうやって毎日を過ごせるかと、そう考えただけでも途方に暮れ、涙をにじませる程、当方はダラシナイのですよ。 そこで老朽化の進む爺さんはしみじみと実感します。「長生きの秘訣は、女房、健やかにあれと、亭主日々つとめること」 若い時には、こんなこと考えもしませんでしたな。 続きはいづれまた。
 シニアはしみじみ実感し読みましたので、他紙の方にもと。