学徒動員の思い出2

 緊張と恐怖で全身が小刻みに震えて、止まらない。続いて、第二弾。第三弾。豪の砂がザーと落ち、砂埃で中は真っ暗、体が埋まってしまう、頭がぼーっとして何が何だか分からない。やっと落ち着きを取り戻す、空襲だ。
 いよいよ来たな。わなわなびくびく体中がこわばって動かない、家族一人一人の顔が目にうかぶ。死にたくない生命がおしい。ああ神様、仏様、父さん、かーさん!!。
 入り口より二つの大きな塊が転げ込んできた。熊毛高女の二年生だった。驚いたことに二人とも腰のあたりに怪我をしているらしい。足元が血まみれだ。
 ここまでやっとはって来たらしい、我々はただおろおろするだけ。あわてて学校で教わった止血法を試みる。なかなか教科書どおりにはいかない。それでもどうにか血は止まった。
 近くで爆発したらしく、出口がつぶれた。「出口は大丈夫か」「よーし大丈夫だからよ、心配するな」お互いひやひや、びくびく、今の落弾で、危険を感じてか、五六人のひとが、とつさに出て行ってしまった。
 我々も心細いし、すぐ後をと思ったが、怪我人がいるのでどうにもならない。仲間と、覚悟をきめ女性と共にいることにきめる。
 どうすれば良い?どうなる?涙が出そうだ、女性はすすり泣く、ああ俺たちも泣きたい、お母さーん!!。

「ああ紅の血は燃える」動員学徒戦没者追悼記より抜粋