小泉政権のかげり

 満月はその瞬間から欠け始める。 権力の絶頂を満月に例えた藤原道長。 「この世をばわが世とぞ思う望月の欠けたるこしもなしと思えば」も虚しく響く。 高支持率を背景に、稀に見る長期政権。 それでも山や谷はあったが、首相にとっては、やはり昨年の衆議院選挙後が最高ののとき、乾坤一擲の解散総選挙自民党を歴史的大勝に導き、党内の政敵も盟友も一掃した。 国会演説に、場違いをものともせずに拍手、拍手の「小泉チルドレン」。 はた目には異様な光景も、首相には向かうところ敵なし、わが世の春だつたはずだ。
 だが今は違う。 強気は裏目に、自信は空回り、とほころびが目立ち始めた。 改革の影の部分を欠落させた施政方針演説、空疎な国会答弁・・・。 権力の中枢を襲う事件の続出が背景にある。 ライブドア事件は首相と、党ナンバー2の武部幹事長、側近で政策の右
腕・竹中総務相を直撃。 耐震強度偽装事件は最大派閥・森派をゆさぶり、米国産牛肉問題も首相が得意とする対米路線が微妙に絡む。
月が欠けるのは自然の理。 権力の場合は「おごり」による。 さあどうする小泉総理。
 中国新聞 1/26日 天風録より引用